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更新日:2018年2月16日

 新編安城市史2通史編「近世」

 解説  はじめに / あとがき

  

 はじめに

 近世部会長  遠 山 佳 治

 平成十七年九月に『新編安城市史6 資料編 近世』は刊行され、写真で全資料を掲載したこと、要約・解説という二部構成で解説部分を充実させたことによって、今までにない資料編と、おかげさまで研究者・郷土史家の方々から良い評価をいただいている。その資料編刊行直後から、今回の『新編安城市史2 通史編 近世』の編さん作業が本格的に始まった。

 市域の近世は旗本久永家をはじめ、岡崎藩・刈谷藩・福島藩など多くの領主が関わる小領主錯綜地域である。このような、一領主ではまとめることができにくい地域の特徴をより一層記述に活かすため、通史編の構成は、従来のように各分野を複合させて全体として時期区分を進めていくのではなく、分野別構成を採用し、分野ごとの時期的な特徴を記すことに特化させた。つまり、通史編の構成は、原則として資料編の構成を発展させる考えを採用した。

 資料編第一章「村と領主」を発展させたものが、通史編の第一章「近世村落の成立」、第二章「一八世紀における村社会と領主支配」、第三章「一九世紀前期における村社会と領主支配」にあたる。そこではほぼ一世紀ごとに時期を区切り、領主支配や村社会の変化を把握して概観し、江戸時代の市域を考える上で基礎となる章である。
 第四章から第七章では各分野を章ごとに、市域で特徴ある事象・事項を中心にしながら、江戸時代を通じて論じたものである。第四章「土地の開発と災害」では土地の利用や開発の分野を、第五章「諸産業の発達と商品流通」では産業・交通・流通の分野を、第六章「村人の文化」では文化の分野を、第七章「真宗と地域社会」では宗教の分野を扱った。
 第四章は資料編第二章「山と水の利用と災害」を、第五章は資料編第三章「東海道と矢作川」を、第六章・第七章は資料編第四章「村に住む人々の暮らしと文化」を発展させたものである。資料編を発展させたといっても、通史編で市域に関する事象を網羅的に取り上げた訳ではなく、とくに特徴的事象に重点を置き、時代の流れを扱った事象の本質的変化を分析するという視点で執筆を進めた。また、先の資料編では各項目を丁寧に解説したために、通史編との内容の重複を可能なかぎり避けるよう努めた。そのため、第五章では市域での活動が少ない川島村太田家についてはあまり触れず、第六章では生活文化の諸相をほとんど触れずに文芸活動を冒頭に置いて重視し、第七章では市域は真宗が優先な地域で、かつ三河全体の統括的役割を果たしていた三河三か寺の本證寺が市域に存在しているため、真宗を特化させた。

 思いかえすと一一年前の平成八年、本市史は農村地域である市史づくりのため、その近世部会長は村落史の専門家が引き受けるべきものと私は考えていて重席の役割を断わっていた。しかし、膨大な本證寺文書が整理され始めていた背景があり、当時の市史準備関係者から、前市史執筆の塚本学氏の精神を受け継いだ研究姿勢で、本證寺文書を駆使した新しい市史像を創ってもらいたいと熱い依頼を受け、その熱望にほだされて部会長の役を引き受けた経過を思い出す。
 限られた時間の中で、残念ながら前市史を超える成果は得られていない部分もあると思うが、前市史や資料編などを土台にして、新しい史料や最近の研究成果を盛り込んだ通史編はできあがっているかと思う。また東海地方ではじめて地方自治体史通史編をカラー版で刊行することができた。今後市民の方が、郷土の歴史に触れる時、ぜひ前市史と今回の資料編・通史編を合わせてご利用いただき、さらに『西尾町内会資料目録』(平成十四年)、『東尾町内資料目録(近世・書籍)』(平成十五年)、『本證寺文書史料集「諸事記」』(平成十五年)、『検地帳集成』(平成十八年)の市史報告書を参考図書として加え、先人の軌跡に思いを馳せていただきたい。

 最後に、通史編は、委員のさまざまな事情もあり、想像以上に時間を費やすこととなった。市史の編さん委員会や事務局、関係者に多大なご迷惑をおかけ致したものの、無事に刊行の運びとなりましたことを、感謝致しております。

 平成十九年十月

  

 あとがき

 近代部会編集委員  篠 宮 雄 二
       
 平成十年の部会発足以来、約一〇年間は市史編さんの仕事にたずさわらせていただいた。この間とりわけ印象に残るのは、『新編安城市史6 資料編 近世』のあとがきにも記したように、近世部会のメンバーのほとんどが地元出身者ではないという状況のなかで、監修者である新行紀一先生のお薦めもあり、部会として安城市内の巡検企画に取り組みつつ、事務局を中心に続々と収集される史料群を読み込みながら、執筆委員および協力員がそれぞれ数点の史料をもとに、市域の歴史について検討する会を実施したことである。地元に不慣れな執筆委員・協力員が事務局のアドバイスを受けながら企画・実施した市内巡検は、ただ単に机の上で史料を読みながら抱いた安城市域の近世のイメージでは全く通用しないこと、言葉を替えれば史料が全く読み込めていなかったことを痛感させられた。こうした経験は、不十分ながらも既に刊行した『新編安城市史6 資料編 近世』や本書のなかに盛り込まれていると考えている。

 本書を編集するにあたり当初一番重視した点は、昭和四十六年に刊行した『安城市史』第四編で叙述された市域の近世との関係をどのように位置づけるか、という点であった。『安城市史』第四編は、おそらくは当時の自治体史のなかでは異色の存在であり、かつその後の近世史研究を先取りをした部分が散見される。近世部会ではこの点を共通認識としつつ、いま思えば部会を若手メンバーを中心に固めたことから来る若気の至りかもしれないが、『安城市史』第四編を超える通史を目指すことを目標とした。この間、史料保存と活用を前提とした史料の悉皆調査、その成果報告として市史報告書四冊の発行に取り組みながら、目標である『安城市史』を超えるために、各人なりに作業を続けてきた。全体としてみれば、所期の目標を達成できたとは言い難いが、一部とはいえ本書の各章において『安城市史』には記されていない事実や論点を提示することができたつもりである。
 読者の皆さまには本書で提示した事実や論点について、ぜひとも史料をもとに検証していただき、ご批判を賜りたいと思う。また本編では述べることのできなかった安城市域の歴史を、読者の皆さまの手で提示していただきたいと思う。幸いにも、市史編さん過程で事務局を中心に収集した膨大な史料(紙焼き)と史料データベースをはじめとする史料活用にむけての整備された環境が、市の財産として残されている。これらの史料の活用を願う次第である。

 最後に、本書の編集にあたって監修者の新行先生には、本来ならば部会編集委員としてなすべき仕事の大半をお願いすることになってしまった。また、新行先生から本書の内容について細やかなアドバイスをいただきながら、全体としては十分に応えることでできなかった部分も多々ある。また事務局の方々には原稿の遅れを含め、多大なご迷惑をおかけした。編集委員の一人として、この場を借りてお詫びする次第である。

 平成十九年十月

  

 

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市民生活部アンフォーレ課 

電話番号:0566-76-6111

ファックス:0566-77-6066

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